0.01nmから10nm程度の波長の電磁波をX線と呼びます。X線は地球の大気で吸収されてしまうため、地上からは観測することができません。人工衛星や気球、ロケットに観測機器を搭載し、大気圏外
から観測する必要があります。太陽以外の天体からのX線放射は、当初、否定的な意見が多い中、1962年にロケット実験が行われ、宇宙はX線で明るく光っていることがわかりました。この実験を主導したジャコーニには、
この功績によりノーベル物理学賞が与えられています。その後の観測で、ブラックホールの発見、中性子星連星系の発見、銀河団高温プラズマの発見と、X線天文学は発展してきました。
現在の天文学では、全ての波長の電磁波で宇宙を観測しており、ほぼ全ての種類の天体から、X線が検出されています。木星のオーロラ起源のX線から、何10億光年の遠方の 超巨大ブラックホールからのX線まで観測対象はさまざまです。これら多くのケースで、X線を発生しているのは数百万度から数億度の超高温のプラズマです。 このような温度のプラズマを生成するためには、莫大なエネルギーが必要です。例えば、ブラックホールや中性子星の場合は、これらの天体周辺の強い重力が になっています。超新星残骸の場合は、超新星の爆発エネルギー、銀河団の場合には巨大な重力場(暗黒物質が主成分)ということになります。