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超新星残骸super nova remnants

超新星残骸について 

  恒星の明るさが数日の間に急激に増光し、それまでの数万倍も変化する現象を新星と言う。 超新星は、さらに数万倍明るく、通常の星の数億から数十億倍もの光度に達する。 これは銀河1個にも相当する明るさである。新星は星の表面層での爆発であるのに対し、 超新星は恒星の進化の最終段階で起こる、その恒星自身の大部分を吹き飛ばす大爆発であると考えられている。

カシオペアA

X線天文衛星Chandraが観測したカシオペアAのX線画像(提供NASA)
   
近年の観測により、超新星爆発は1個の銀河あたり数十年に1 回の割合で起こると推定されている。 しかし、我々の銀河ではこれまで可視光で観測されたことはほとんどなく稀な現象であった。 古くの文献にその現象が記録に残っており、現在その残骸が同定されているものは、 SN185、SN393、SN1006、SN1054 (かに星雲) 、SN1181 (3C58)、SN1572 (Tycho 超新星残骸) 、 SN1604 (Kepler超新星残骸) の7 個である。

超新星はスペクトルの様子によって2種類に大別されている。 可視光の観測において水素の吸収線が観測されないものをI型、水素の吸収線が目立つものをII型と呼んでいる。 また、それぞれの光度曲線(光度の時間変動を示す曲線)にも違いが見られる。 これらの起源としてはI型超新星は炭素の核燃焼の暴走による爆発であり、II型超新星は鉄の核の重力崩壊に よって起こると考えられている。

超新星爆発によって、太陽質量の1~10倍の物質が星間ガス中に放出される。 吹き飛ばされた星の外層の物質(イジェクタ) と周りにあった星間物質は超新星爆発で生じた衝撃波によって加熱され、 数千万度に達する高温プラズマの状態になる。これらはその後何万年もの間、可視光、電波、X線などで輝く。 これが超新星残骸である。爆発により生じた強い衝撃波は、 周囲の星間物質を取り込みながら球状に広がっていき、自由膨張期、断熱膨張期、放射冷却期を経て消滅に至る。

白鳥座ループのX線観測 

白鳥座ループ

ROSATで観測した白鳥座ループのX線画像。これまでの観測領域を青枠で示す。
白鳥座ループは10000 年程前に起きた超新星爆発の跡で、比較的古い超新星残骸である。 X線で非常に明るく、典型的なシェル型構造を示す超新星残骸である。 視野直径が2°.5×3°.5と大きいことから、いままでに様々なX 線天文衛星で観測が行われてきた。 すざくなどでX 線CCD を使った精度の高い観測を続けてきた結果、複雑な構造が次第に解き明かされている。







シェル領域の重元素の欠乏したプラズマの観測 

すざくは北東端を観測し、初めてC-VI Kα、C-VI Kβ、N-VI Kα、N-VII Kαの輝線を検出し, その性能を発揮した。その結果は太陽組成の1/10 程度ときわめて低い元素組成であった。 ところが、すざくの観測による詳細な解析の結果、白鳥座ループ北東のシェルの一部は通常の星間物質と 同じ組成を示すことを発見した。その領域は、まさに超新星残骸の見かけ上の外縁部である。 そこでのOなどの重元素量は? 0.5 太陽組成で、太陽系から白鳥座ループにかけての星間物質組成とよく一致する (太陽が2 倍程度の重元素過多であることはよく知られている)。 このことから、空洞を作っている壁物質は 重元素組成が大変低いのだが、そこを破って外に突き出た外縁部では 星間物質が熱せられて見え始めていると解釈できる。 現在我々は白鳥座ループの北部の外縁でも重元素量の 高い領域と、低い領域とに分かれることを突き止めている。 それぞれの領域からの典型的なスペクトルを図2 に示す。両者の違いは歴然としている。

すざくが観測したシェル領域のX線スペクトル

すざくで見たシェル領域のスペクトルで、重元素組成欠乏領域(左)と外縁部の星間物質程度の重元素組成領域(右)とを示す。 輝線構造は似ているが、連続成分構造が異なる。

中央西部にあるシェルの破れの観測 

ROSATでは南西部に強度が弱く、シェルのはっきりしない領域があることが知られている。 電波では、2つの超新星残骸が衝突しているという仮説が出されているが、 X線ではそのような兆候はなく、 シェル成分の強度の低い領域があり、シェルの破れであろうとみなせる。 これまでの観測からシェル成分の強度分布を調べると、中央部にも強弱のあることが分かった。 Newton衛星の観測で明らかになった後、 すざくによる観測でもその構造を調べた結果、 おそらく中央西部にあるシェルの薄くなった領域の大きさは、 南西部の破れと同じくらいであることが分かった。

内部の重元素の豊富なプラズマの観測

すざくが発見した重元素の集中している領域。左はFe、右はNeの分布。 中央の重元素分布の中心(青十字)は幾何学的中心(黒×印)から25′南にシフトしている。 Neは周辺にも多いように見える。白線の等高線はROSATによるX線強度分布を表す。 白鳥座ループ内部が高温プラズマで埋まっていることは、ぎんがで発見、 あすかで確認、Newton で北東から南西にかけて観測、すざくで構造を調べている。
すざくでは重元素の多い高温プラズマが内部を埋めていることを観測的に調べたほか、 北東から南西にかけて温度傾斜があり、さらに重元素の分布も北東から南西にかけて大きな非一様性を示していることが判った。 これまでの観測データをすべて使用して噴出物の重元素分布を調べた結果、各重元素の空間分布が明らかになった。
その例を図に示すが、Fe Si S などは中央部分の半径30′ ほどに集中しているものの、 その見かけの重心は白鳥座ループの見掛けの中心から25′ 近く南にシフトしている。 一方、O Neなどは、中央部分の集中とともに周辺部分にも集中している領域がある。 また、Mg は中央部分にはあまり見られず、周辺部分に集中している領域があることがわかった。

X線観測から求めた白鳥座ループの重元素分布

左がFe、右がSi

参考文献

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